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胃がんの治療について

(からだとくらし 2011年10月号掲載)

大田垣純

広島共立病院 外科部長  大 田 垣  純

 胃がんは戦後男女とも最も死者の多い疾患でしたが、その後は徐々に減少し二〇〇三年度では男性では肺がんに次いで2位(約3万2千人)女性では大腸がんに次いで2位(約1万7千人)となっていて、その後も徐々に減少しています。中国、日本、韓国などアジアでは患者が多く、その他の地域ではそれほど多くはありません。胃がんは私たちが診療でよく遭遇する疾患で、内視鏡検査の発達で早期のがんが多く発見出来るようになってきましたが、発見した時点での進行度によって、その治療法と術後の予後(※1)は、ほぼ決定します。
 国立がんセンター中央病院の統計によると、胃がんの5年生存率は全体では71、4%。ステージⅠでは91、2%。Ⅱでは80、9%。Ⅲでは54、7%。Ⅳでは9、4%と報告されています。胃がんは最も早期の状態で見つけやすいがんの一つで、ステージⅠで見つかれば生体を傷つけることが少ない治療で90%以上が治るがんであり、多くの人が無症状のうちに検診を受けることで治療成績は良くなる疾患です。

◆進行度を決定する要因(胃がん取り扱い規約で定められた)は次のようなもの
 があります。

1)壁深達度 Tで表示 (がんの深さ)
  T1: がんが粘膜または粘膜下組織にとどまるもの
    T1a: がんが粘膜にとどまるもの (M)
    T1b: がんの浸潤(※2)が粘膜下組織にとどまるもの (SM)
  T2: がんの浸潤が粘膜下組織を超えているが固有筋層にとどまるもの (MP)
  T3: がんの浸潤が固有筋層を超えているが、漿膜(※3)下組織にとどまるもの (SS)
  T4: がんの浸潤が漿膜表面に達しているかまたは露出、あるいは他臓器に及ぶもの
    T4a: がんの浸潤が漿膜表面に達しているか、またはこれを破って遊離腹腔
       に露出してるもの (SE)
    T4b: がんの浸潤が直接他臓器に及ぶもの (SI)

2)リンパ節転移            3)その他の転移
  N0:領域リンパ節に転移を認めない      M0:領域リンパ節以外に転移を認めない
  N1:領域リンパ節に1~2個の転移を認める  M1:領域リンパ節以外に転移を認める
  N2:領域リンパ節に3~6個のリンパ節    MX:領域リンパ節以外の転移が不明である転移を認める
  N3:領域リンパ節に7個以上の転移を認める
  NX:領域リンパ節の転移が不明である
※領域リンパ節転以外の転移とは、リンパ節、肝、腹膜、皮膚、肺、骨、胸膜、脳などへの転移であり、手術中に採取した腹水細胞診断の陽性も これに含まれます。

■以上の要因で決まるステージ(進行度分類)表

表

M1




ⅣN3
ⅡB
ⅢA
ⅢB
ⅢC
ⅢCN2
ⅡA
ⅡB
ⅢA
ⅢB
ⅢCN1
ⅠB
ⅡA
ⅡB
ⅢA
ⅢBN0
ⅠA
ⅠB
ⅡA
ⅡB
ⅢBT1a ,T1b
T2
T3
T4a
T4b深さ転移

以下がステージ(Ⅰ~Ⅳ)ごとに行われている治療法です。
 ステージⅠA:T1aで2cm以下分化型(※4)であれば内視鏡切除、それ以外はリンパ節郭清(※5)を簡略した胃切除
 ステージⅠA:T1bでリンパ節郭清を簡略化した胃切除
 ステージⅠB:定型手術
 ステージⅡA:定型手術 (T2かつN1の場合、補助化学療法を追加)
 ステージⅢA~ⅢC:定型手術+補助化学療法、ただしT4bには浸潤多臓器の合併切除が必要
 ステージⅣ:根本的治療は行えず、化学療法、放射線療法、緩和手術、対症療法の対象

※1(予 後):病気や手術の後、どの程度回復するか見通しを表す。
※2(浸 潤):水が染みこんでいくように周囲に入りこむ事。
※3(奨 幕):内臓器官の表面を覆う薄い半透明の膜の事。
※4(分化型):細胞の形態を顕微鏡で分類したもので分化型と未分化型に分けられ前者のほうが悪性度が低い。
※5(郭 清):悪性腫瘍のリンパ行性転移に対する処置としてリンパ節を切除する外科的治療法。