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外科のトピックス―急性虫垂炎―

(からだとくらし 2013年8月号掲載)

迫川賢士

広島共立病院 外科医師  迫 川 賢 士

 一般にみなさんが〟盲腸〝と呼んでいる病気は、正式には急性虫垂炎といい、私たち外科医が日常診療で最もよく遭遇する病気の一つです。しかし実は、このよく目にする急性虫垂炎の治療方針は現在でも病院ごとにかなり異なっています。

二つの治療方針
 一般的に虫垂炎の治療には大きく分けて二つの方針があり、一つは手術治療、そして、もう一つが絶食や抗生剤等による手術以外の治療で、保存的治療と呼ばれています。以前は多くの病院で真っ先に手術が行われていましたが、それに伴う合併症が予想以上に多く発生していました。また近年、抗生剤の有効性がめざましく進歩し、ほとんどの虫垂炎が保存的治療で治ることが分かり、必ずしも手術治療が第一選択ではなくなってきました。

患者さん自身の選択で
 当院では現在、虫垂炎の治療方針決定に際して、各治療における利点と欠点を説明させて頂き、患者さん自身に治療を選択して頂いています。その中でも特に、手術治療には稀に重篤な合併症が起こり得ること、保存的治療後には二〇~三〇%の頻度で再発が起こり得ることを十分にご理解して頂くことが大切です。二つの治療のこれらの欠点をできるだけ予防するために、最近では〟待機的虫垂切除術〝という第三の治療が行われるようになってきました。これは、虫垂炎発症時の急性期、つまり患者さんの痛みが強くおなかの中の炎症が高度と思われる時期には、難航が予想される手術治療は避けて、保存的治療で一旦軽快させておき、おなかの中の炎症が消える約三ヶ月後のまったく自覚症状がないときに待機的に虫垂切除を行うというものです。これにより、手術に伴う合併症の危険性を減らし、さらに再発を予防するということが可能となりました。但し、保存的治療で一旦治った患者さんの多くは再発しないことを考えれば、あくまで患者さんの希望による手術ということになります。  みなさんも一度は聞いたことがある〟盲腸〝の最近の治療について、ご理解頂けたでしょうか?

「虫垂炎のクリニカルパス」での入院について

4F病棟 看護師  慶 久 直 美

 クリニカルパスは、医療の標準化とケアの向上を目的として、一九八〇年代に米国で急速に普及したツールです。当院でのクリニカルパスは、医師や看護師だけでなく、他職種も内容を確認して作成されています。入院前~退院まで標準的なスケジュールで治療が行えると医師が判断した場合、クリニカルパス適応となります。入院中のスケジュールは、時間の流れに従って治療や検査、食事、安静など、イラストを添えてわかりやすく書いた表を用いて説明させて頂いています。
 虫垂炎の手術でクリニカルパス適応の場合、腹膜炎を併発していない場合は五日間、腹膜炎を併発している場合は最短で六日間の入院予定となっています。術後、痛みがあれば医師の指示で数種類の痛み止めを適宜使用し、痛みのコントロールができるように対応しています。腹膜炎を起こしていない場合は手術当日から歩行可能な場合もあり、翌日から食事(五分粥からスタート)も始まります。手術創には透明のフィルムテープを貼っているので、入院中でもシャワー浴をすることが出来ます。腹膜炎を起こしていた場合は、症状に応じて食事の時期などが決まります。
 退院後の生活については、一ヶ月程度は激しい運動は避ける方がよいでしょう。通常の学校生活やデスクワークは問題ありませんが、疲れるようであれば休養するようにしてください。抜糸は退院後外来にて行います。

手術は、腹腔鏡を使用します

手術室 看護師  増 川 真 紀

 広島共立病院では、昨年度二十五例の虫垂炎手術が行われました。今年度もすでに十二件の手術が行われています。ほぼ全てが、腹腔鏡を用いた鏡視下手術でした。
 虫垂炎手術は、緊急手術として行われることも多いため、休日や夜間もすぐに対応できるよう看護体制や器具を常に整えています。
 虫垂炎の患者さんの特徴としては「手術は初めて」という、学生さんなど若い人が多いことです。
 私たちは、患者さんにできるだけリラックスして手術に臨んで頂けるような看護を心がけています。