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感染症を予防しましょう

ワクチンの接種で積極的な予防を

 ワクチンは、毒性を弱めたりなくしたりした細菌やウイルスの一部を体に入れることよって免疫システムを強化し、実際の感染症に対する感染や重症化を防ぐものです。新型コロナワクチンやインフルエンザワクチンが広く知られていますが、日本では子どもの頃から法律に基づいた定期接種で様々なワクチンを接種しています。
 しかし生まれた年齢によっては接種していないワクチンがあったり、成人でも加齢によって抵抗力が落るとかかり易くなるような感染症に気を付ける必要があります。高齢になってから感染すると重症化しやすくなったり、家族へ感染するリスクもあるので、成人のワクチン接種について知っておくことが大切です。
 また、新型コロナ感染症は依然として感染者が出ていますし、インフルエンザも流行期を迎えています。適切にワクチン接種を受けて油断することなく予防に努め、感染を広げないようにしましょう。

 

気を付けたい感染症

 

高齢者が注意したい感染症

 

【ポイント】

高齢になると体力が落ち、どんな感染症でも油断できません。しかしワクチンの接種で感染や重症化を防ぐことのできるものもあります。

 

肺炎球菌

 肺炎球菌は文字通り肺炎の原因になるほか、髄膜炎や菌血症を引き起こすこともあります。高齢者や乳幼児、免疫力が低下した人は重症化しやすく、髄膜炎や菌血症のような侵襲性肺炎球菌感染症にかかると死亡することもある怖い感染症です。
 日本では小児のほか、65歳以上の高齢者を対象に定期接種が行われています。定期接種の対象年齢や期間はその年や自治体ごとに異なるため、お知らせが届いたら忘れないようにしましょう。
 日本では3種類の肺炎球菌ワクチンが接種可能で、このうち定期接種にはニューモバックスNPというワクチンが使われています。また基礎疾患があるなど感染リスクが高い方は、任意接種ですが他のワクチンと組み合わせてより予防効果が高くなる接種方法もありますので、医師にご相談ください。

肺炎球菌のワクチン(ニューモバックスNP)

 

帯状疱疹
 帯状疱疹は神経に沿った痛みやかゆみに始まり、その後、発疹や水ぶくれなどの皮膚症状が現れます。体の左右どちらかだけに生じるのが特徴で、部位によって神経痛や麻痺が残ったり、皮膚の発疹跡がきれいに治らなかったりすることがあります。
 帯状疱疹の原因は水痘(水ぼうそう)と同じウイルスです。子どもの頃に水ぼうそうにかかり、治った後も神経の根元に潜んでいたウイルスが、加齢や病気などで免疫が低下したときに再び増殖して皮膚や神経を攻撃します。50歳代から患者数が増え、80歳までに約1/3の方が経験します。帯状疱疹もワクチン接種で発症を減少させることができます。

 

家族への感染に注意したい感染症

 

【ポイント】
感染症は自分の周りの人に感染する危険があります。妊婦さんなどの特定の人は特に感染しやすい一方で、ワクチンを受けられない場合もあります。

 

風疹
 風疹は三日ばしかとも言い、症状ははしかに似ていますがウイルスが違います。発熱や発疹、リンパ節の腫れなどのほか、脳炎や関節痛といった合併症があり、感染力が非常に強い上にウイルスに直接有効な薬はありません。一番怖いのは妊婦の感染で、妊娠20週までにかかると胎児にも感染し、難聴や白内障、心疾患などを合併する先天性風疹症候群を発症する危険があります。
 風疹ワクチンによる予防効果は高く、95%以上の人が風疹の免疫を獲得できるとされていますが、日本では昭和54年より前に生まれた男性は公的な接種機会がありませんでした。そのため今の40代から50代の男性の20%は風疹の抗体(=免疫)がない状態で、この人達に対して2025年までの期間、定期接種が実施されています。対象者は抗体検査を受け、抗体価が不足している人はワクチン接種を受けることができます。
 周囲に妊婦さんがいるときは胎児への感染リスクもあるため、対象の方は自治体からクーポン券が送られたら忘れずに検査を受けておきましょう。抗体検査もワクチン接種も無料となっています。

 

山や草むらで注意したい感染症

 

【ポイント】
感染症の感染経路は空気感染や飛沫感染、接触感染、経口感染などいろいろありますが、虫が細菌やウイルスを媒介することもあります。

 

ツツガムシ病
 ツツガムシ病はダニの一種であるツツガムシの幼虫が人を刺すことでリケッチアという細菌が感染する病気で、発熱や発疹が主な症状となり、広島市内でも感染例が報告されています。ツツガムシ病は抗生物質の内服で効果的に治療ができますが、治療が遅れて症状が悪化すると死亡に至ることがあります。また虫を媒介にすることから暑い季節の感染症と思われがちですが、秋から冬にかけてツツガムシの幼虫が孵化するため、ツツガムシ病は秋から冬に流行します。
 ツツガムシはマダニよりも小さなダニのため肉眼で発見することは難しく、刺されないことが唯一の予防策となります。普段から農作業や庭仕事、アウトドアレジャーの際には長袖・長ズボンを着用し、露出部分に虫よけスプレー(DEETを含む)を塗りましょう。

吉國先生   (表紙)
総合診療科医長
吉國 晋