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痛風について

 痛風は、高尿酸血症が長期間続くことで、過飽和となった尿酸塩が関節滑膜あるいは軟骨上にたまり、それが外傷や、大量飲酒や大食といった種々の刺激により尿酸塩結晶が関節腔内に剥脱することで生じる関節炎です。西洋においては古い病気で紀元前にヒポクラテスがすでに報告しています。日本では以前にはないとされた病気でしたが、明治時代になってこつぜんと現れだし、戦後それも1960年代になってから増加しています。現在も増加し続け、国民生活基礎調査によると「痛風で通院中」と回答したものは右肩あがりで増加し2004年の調査では87.4万人に達するとされています。都内の大規模な検診結果から、予備軍となる成人男性における高尿酸血症の頻度は30歳以降では30%に達していると推察されています。

痛風発作の前に予兆
 痛風の関節炎は急激に発症することから痛風発作と言われ、痛風発作の前に予兆といわれる局所の違和感を訴えることが多くみられます。痛風発作の好発部位は、第1中足趾節関節(足の親指の付け根)で、50~70%は第1中足趾節関節に生じます。典型的な発作はしばしば夜間睡眠中に出現し、痛みで目覚め、足をつくこともできない状態になります。痛みの始まりからピークまでは半日程度であり、高度の関節炎では真っ赤に腫れ上がった後、7~14日で自然軽快します。初期の痛風発作は1~2年に1回程度であり、症状がおさまっている期間には全くの無症候です。そのため発作が治まると、痛風の元となる高尿酸血症の治療に来院されなくなる方も見られます。しかし、高尿酸血症が引き起こしてくるものには、痛風のほかにも、腎障害、尿路結石があります。また、痛風は高尿酸血症に比べて心血管疾患リスクとの関連が強い傾向が報告されてきています。血清尿酸値は、心血管疾患や高血圧、メタボリックシンドロームなどと関連しており、血清尿酸値は疾患リスクを反映するマーカーとして考えられるようになってきていて、血清尿酸値を管理することは大事です。

こんな人が痛風になりやすい
 血清尿酸値が7.0mg/dlを超えると、高くなるに従って痛風関節炎の発症リスクが高まります。高尿酸血症の期間が長く、また高度であるほど、尿酸塩の塊である痛風結節はできやすくなります。アルコール摂取量が多くなればなるほど、痛風発症リスクは高くなります。ほかにも肉類・砂糖入りソフトドリンク・果糖の摂取量が多かったり、肥満度の高い人は痛風になりやすくなります。逆に、乳製品摂取量が多い、コーヒー摂取量が多い、ランニング距離が長い、適度な運動を日常的に行う集団は痛風になりにくい傾向にあります。

治療方法
 痛風発作のいちばんひどい時には非ステロイド抗炎症薬(NSAID)や副腎皮質ステロイドの消炎鎮痛剤が有効ですが、痛風関節炎が軽快すればNSAIDは中止します。痛風発作時には血清尿酸値が低値を示すことが多く注意を要します。また痛風発作時に血清尿酸値を変動させると発作の増悪を認めることが多いため、発作中に尿酸降下薬を開始しないことを原則とします。尿酸降下薬の投与開始初期は、痛風発作が再燃することもあり、注意を要します。すでに尿酸降下薬での治療を開始していて、痛風発作が起こった場合は、尿酸降下薬を中止することなく、痛風関節炎の治療に準じて消炎鎮痛剤の投与を併用します。痛風結節の治療では摘出術が考慮されることもあります。痛風発作を繰り返したり、痛風結節を認める場合は薬物治療の適応となります。高尿酸血症の治療では、予後に関係する肥満、高血圧、糖・脂質代謝異常などの高尿酸血症の発症に関連する生活習慣を改善することが最も大切です。血清尿酸値を下げるために生活習慣の改善を指導することが重要で、具体的にはアルコール飲料やプリン体,果糖、ショ糖やカロリーの過剰摂取を避け、また過激な運動は控えるようにします。

tanaka
整形外科部長
田中 玄之
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