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形成外科は何を診る診療科かご存知ですか?

見た目と機能を修復し、生活の質向上に

 形成外科とは「体表面の先天的・後天的変形、欠損を修復し、機能的、形態的回復をめざす外科系診療科」とされています。あまり馴染みのない方が多いのが現状ですが、世界的に見るとその歴史はかなり古く、古代インドの医学書に既にこの分野での手術法について記載されています。「変形や欠損を修復」ということから戦傷との関係が深く、第一次世界大戦以降、欧米を中心に急速に発展してきた経緯があります。

 これまで形成外科について認知度の低かった広島県ですが、ここ十数年で診療が本格化しつつあり、これから受診する患者さんも増えることが予想されています。広島共立病院でも、毎週火曜日を基本として形成外科専門医による診察と手術を行える体制が整い、既に多くの患者さんが診療を受けられています。

 形成外科は見た目と機能を本来あるべき姿に治すことで、患者さんのQOL(生活の質)向上をめざす診療科です。気になることがあれば、遠慮することなくぜひ相談してください。

広島共立病院で多い形成外科の疾患

「形成外科診療の特徴」


 真皮縫合

 形成外科は体表を中心に外科的に修復する診療科なので、手術が多くなります。皮膚縫合は外科手技のなかでも基本的な手技ですが、形成外科ではできるだけ傷あとが目立たないように様々な工夫をします。その一つに「真皮縫合」という手技があります。これは皮膚の表面(表皮)より下の部分(真皮)を縫うことで、皮膚表面の緊張を緩和し、傷あとをきれいにする効果があります。

 また、縫合する場所によって糸の太さや種類を変えて、よりきれいな傷跡を目指します。お子様の外傷(けが)、顔など傷あとが気になる場所の縫合も遠慮なくご相談ください。

 

「実例の紹介」

 皮膚・皮下腫瘍

 形成外科では皮膚や皮下にできた「できもの」や「しこり」を扱います。腫瘍と言うと大きな病気に思えますが、必ずしも悪性というわけではなく、ほくろやイボ、粉瘤(ふんりゅう)、脂肪腫などの良性のものも含めてすべて腫瘍と呼びます。

 ほくろやイボなどは見た目を気にされる患者さんの受診が多く、ほとんどは手術で取り除きます。基本的には局所麻酔を使用しての短時間の外来手術で、その日は帰宅でき、後日、来院してもらい抜糸するという流れです。その間に、取り除いた組織を病理検査し、悪性腫瘍でないかどうかの確定診断を行います。 

 腫瘍は小さいうちに、気付いた時点で治療しておいた方が、小さい傷、小さな手術で済むことが多いので、気になる場合は早めに相談してください。

 

 眼瞼下垂

 眼瞼下垂は上眼瞼(まぶた)が垂れ下がり黒目にかかっている状態のことで、先天的なものと加齢などによる後天的なものとに分かれます。垂れ下がりが強くなると、「まぶたを上げにくい」「見えにくい」状態になり、頭痛や肩こりにつながる場合もあり、生活に支障が出てきます。

 治療方法はまぶたが下がっている原因によって異なります。二重(ふたえ)の線を切開し、まぶたを持ち上げる筋肉に手を加える方法や、まぶたの皮膚のたるみを切除する方法などがあります。術後は目が腫れたり、内出血が続くことがあります。また、目元が変わることで顔の印象が変わります。

 

 陥入爪・巻き爪

 爪の端が周りの皮膚に食い込んで痛みや炎症を起こすのが陥入爪、爪が横方向に変形して爪の下の皮膚をつかむように巻いてしまっているのが巻き爪です。このような爪の変形

は、深爪や合わない靴の着用、爪白癬(水虫)など原因は様々です。痛みや炎症、変形の程度により治療を検討します。

 まずは、爪の切り方の指導や部分的な保護、靴の選択、フットケア等で保存的に治療を行います。痛みや炎症が強い場合、早期に治療したい場合や保存的治療が無効な場合には手術を行います。

 

「その他の診療」

 外傷(けが)や熱傷(やけど)、手術の傷などの傷あとが目立ったり、徐々に盛り上がったり、ひきつれたりすることがありますが、その治療も形成外科の領域です。他にも、生まれつきの変形(耳の変形や足指の変形など)、褥瘡(床ずれ)の管理が難しい場合、腋臭症(わきが)の治療など幅広いケースに対応します。また、乳癌術後の変形に対する手術(乳房再建)や陥没乳頭などの手術も得意としています。

 気になることがあれば形成外科専門医または主治医に相談するなどして受診を考えてみてはどうでしょうか。

 

Screenshot
広島大学病院  医師(形成外科専門医)
佐々木 彩乃