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増えています、小児の感染症

感染症が流行する理由

 

 感染症は、細菌やウイルスが人間の体内で増殖することによって引き起こされます。空気が乾燥するこれからの季節は空気中にウイルスが浮遊しやすく、さまざまな感染症が流行しやすい条件にあります。

 加えて、ここ数年のコロナ禍では社会全体で感染症対策が徹底されていましたが、徐々にそれらが緩くなってくる中で、細菌やウイルスに触れる機会も増え、結果的にさまざまな感染症の患者数が増えています。また、乳幼児は感染経験がないことから体内に抗体もなく、より感染に対して弱い状況にあると言えます。

 感染症に対しては感染者との接触を避けるのが一番ですが、日常生活を送りながらこれを行うのは難しく、完全な予防はできません。それ以外では、手洗いうがい、マスクの着用、栄養と睡眠といった基本的なことに気をつけるのが予防法となります。また、ワクチンの接種は、たとえ感染したとしても症状を軽くする効果もあります。

 

 

 

 

広島共立病院小児科における感染症の実際

「感染症の入院患者数の傾向」


 広島共立病院の小児科における、2017年~2024年(11月末現在)の主な感染症の入院患者数は以下のグラフの様になります。新型コロナウイルス感染症が流行し始めたのが2020年ですので、その後の数年間にマイコプラズマ肺炎とインフルエンザの数が大きく下がり、2023年から再び増加傾向にあることが分かります。

 

 

「主な感染症の特徴」

 マイコプラズマ肺炎

 

 マイコプラズマ肺炎は肺炎マイコプラズマという細菌によって感染するもので、2024年に大きく流行した感染症の一つです。潜伏期間が長いことで気づかないうちに感染が広がりやすく、広島市内でも8月ぐらいから急激に増え始め、冬を迎えてもまだ収束していません。

 症状は熱と咳が主で、熱が下がった後でも咳が長く続くことがあります。

 診断は喉の粘膜を綿棒で拭った検体を調べることで確定が可能ですが、検査の感度が低いこともあり、症状や流行状況、患者さんの周りの感染者の有無、レントゲン検査の結果などによって総合的に判断します。

マイコプラズマ肺炎に効く抗生剤は限られており、小児は肺炎に進行しやすいで、早めの治療につなげるためです。

 

 インフルエンザ

 

 インフルエンザは毎年のように流行する感染症で、症状は風邪と似ています。鼻の粘膜を綿棒で拭った検体を調べる抗原迅速検査によって短時間で感染を調べることができますが、感染したばかりの時期では検出できず、完全ではありません。

 インフルエンザの治療薬には内服薬・吸入薬・点滴があり、患者さんの年齢や状態によって使い分けます。また、ワクチン接種については、完全に予防はできないものの、発症率には明確な差があり、重症化予防効果も認められています。

 

 

RSウイルス感染症

 

 

 RSウイルスには、ほとんどの小児が2歳までに一度は感染するとされています。症状は熱、鼻汁、咳といった風邪に似たものですが、重症化すると肺炎などに進行し、入院が必要になる場合もあります。成人でも感染しますが、多くは軽い症状で終わってしまうので、知らない間にお子さんにうつしてしまうことが多いのも特徴です。

 この感染症には特効薬がなく、対症療法での治療しかありません。2024年から妊婦に接種するワクチンも開始されていますが、任意接種で高価なことなどもあり、まだ広く普及していないのが実情です。今後の効果に期待したいところです。

 

 

参考/ロタウイルス感染症

 

 ロタウイルス感染症はロタウイルスの感染によって引き起こされる急性の胃腸炎で、下痢や嘔吐、腹痛、発熱が主症状です。5歳までの急性胃腸炎の入院患者のうち、約半数はロタウイルス感染症でしたが、2020年にワクチンの定期接種が開始され、かなり数が減りました。広島共立病院でも2020年から入院患者は出ていません。

 

 

「広島共立病院小児科の治療」

 

 これまでに挙げた感染症の初期症状は風邪に似ており、医療機関を受診するタイミングで悩むことがあると思います。小児の場合、その目安は「夜、ちゃんと眠れているか?」「水分をちゃんととれているか?」で判断してください。これらに支障があるようですと、体力のない小児は症状が悪化しやすくなります。

 

広島共立病院小児科の特徴

 

 

 感染症の治療はその種類を正しく把握することが重要です。地域密着型総合病院である広島共立病院は、地域の流行状況などを常に把握していますので、その情報を元に診断・治療につなげています。また、レントゲン検査は早く撮れて、血液検査においてはより詳細なデータを調べる設備が整っています。さらに、入院治療が必要となった場合も、速やかな入院が可能です。

 入院が必要なのは、症状によって水分や食事の摂取状況がよくない、薬を飲むのが困難、呼吸状態が悪い、熱性痙攣の経過観察が必要、などの場合となります。

 なお、広島共立病院の小児科は紹介がなくても直接受診していただけます。発熱がある患者さんについては隔離室を設けて感染対策もしていますので、安心して受診してください。

 

Screenshot
広島共立病院 小児科 医長
友田 彩