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大腸癌の治療について

 大腸癌はかつて日本人には少ない癌とされていましたが、戦後から1990年代までに急速に増加してきた癌の一つです。食生活の変化がその大きな原因と考えられています。2001年には毎年10万人を超えるようになり、2020年には男女合わせた日本人の癌罹患数、罹患率ともに1位になると予想されています。

生存率の高いガン
 癌は高齢になるほど罹患リスクが高くなる病気ですが、大腸癌も同様で男女とも40歳代から罹患率が上昇し高齢になるほど高くなり、男性に多い傾向があります。また、大腸癌の死亡者数はこの20年間で2倍以上に増加し、女性の癌死亡原因の1位、また、男性では胃癌、肺癌、肝臓癌についで4位になっています。しかし、大腸癌で死亡する人は罹患者の約3割といわれており、これは大腸癌の生存率が比較的高く、治りやすい癌であることを示しています。
 大腸癌の発生部位と頻度は直腸37.9%、S状結腸34.3%と下部大腸が7割を占め、上行結腸10.4%、横行結腸7.0%、盲腸5.9%、下行結腸4.5%です。癌による症状は下血と便が細くなる、残便感、腹痛、下痢と便秘の繰り返しなど排便に関する症状が多く、S状結腸や直腸に発生した癌に起こりやすい症状です。

早期に発見して治療を
 治療として粘膜内に留まった早期癌であれば内視鏡的切除でほぼ100%治りますが、早期癌でも粘膜筋板を超えて進展したものは10%程度リンパ節転移や再発の可能性があり外科的治療が必要となります。外科的手術では腫瘍の部位から5~10㎝離れたところで腸を切除し所属リンパ節を一緒に切除します。直腸癌で肛門に非常に近い部位に癌ができた場合には人工肛門が必要となる場合がありますが、技術の進歩により人工肛門の頻度は少なくなっています。進行度別の5年生存率は概ねステージ0 : 100%、ステージ1 : 98%、ステージ2 : 90%、ステージ3 : 70%、ステージ4 : 15%で、早い時期に癌が見つかれば治る可能性は高く、症状のない早期の状態で癌を見つけて治療することが大切です。

最良のケア、提供を目指して…

手術部看護師長 林 操

 私たち手術室看護師は、手術看護を専門に行っている看護師です。24時間いつでも手術に対応します。
 手術の予定が入れば、どの手術室で、何時から手術を行うかスケジュールを組みます。今回のテーマである大腸の手術の場合、手術をする場所、手術の方法(開腹、腹腔鏡)により、準備する器具は大きく変わります。ですから、事前にどのように手術するか医師より情報を得て、手術予定日までに手術の準備を行います。
 また、手術前には、手術を受けられる患者様のお部屋に伺いお話をすることで、できるだけ手術前の不安を軽減するよう配慮しています。そして、手術が終わり落ち着かれた頃には、再度病室を訪問し、自分たちの看護の振り返りも行っています。
 近年ガン診療は、診療技術の向上や化学療法の発展、低侵襲な腹腔鏡手術の普及により複雑化してきています。様々な患者様の病状に応じ、最良のケアが提供できるように、様々な専門職がチームとなって治療にあたります。
 患者様にとって、一大事である手術を、安全に安心して受けられるよう努力していきたいと思います。

悲しみを乗り越えて

消化器系 癌体験者 山田 博満

 平成13年6月、激しい腹痛で苦しみ、先生の診察を受けました。
 結果は直腸ガン、私にとっては重い判断でした。人工肛門とは死ぬ迄の付き合い、気持も暗くなり悲しい心となり、生きる命の大切さを忘れた日々でした。
 幸いに転移はなく20日間で退院、感謝の心で六月の空を楽しんでいました。手術前には妻、娘、孫に不安定な私の心、家族より、「じいちゃん頑張って、ガンバッテ…」心配かけたり、励まされたり、複雑な心境を今振り返れば思い起こされます。
 先生、看護師さんにお世話になり感謝。人生の中で忘れられない一ページとなりました。入院中は六人部屋、同室の方と仲良くなり、退院後も話し合っています。
 嫌いだった人工肛門も少々の難はありますが、平常の生活に戻っています。
 傷ついた一片の心、自分を恨んだ心、色々とありましたが、前を向いて歩こうと心のもち方を変え、日々を元気に頑張っています。退院時、看護師さんより癌患者会〟歩みの会〟に入会をすすめられ、参加しています。
 ガンの部位は違いますが、先生、看護師さんとの交流、患者さんとの語り合いなど楽しく参加しています。悲しみを乗り越えて、大切な毎日を送っています。又お便りします。

外科部長
大田垣 純