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甲状腺がんについて

(からだとくらし 2012年6月号掲載)

高永甲文男

広島共立病院 副院長・手術部長  高 永 甲 文 男

 我が国の甲状腺癌の推定罹患数は二〇〇三年では八,〇六九例で、全癌の一・三%を占め、男女比は一対二・九九でした。死亡数は二〇〇七年では一,五五八例でした。甲状腺癌の危険因子として、原爆被爆者やチェルノブイリ原発事故後にみられた小児甲状腺癌の増加などの放射線被曝(被爆時年齢一九歳以下、大量)は科学的に立証されています。甲状腺癌の組織型別頻度は、二〇〇四年の統計によると、乳頭癌九二・五%、濾胞癌四・八%、髄様癌一・三%、未分化癌一・四%で、乳頭癌が圧倒的に多いという結果でした。甲状腺癌は一般的に進行が緩徐で、剖検時にも多数発見されます。乳頭癌の中にも高危険群があり、その場合には生存に影響してきます。未分化癌は極めて予後不良で、急速に増大するため集学的治療が必要です。乳頭癌や濾胞癌などの分化癌から未分化転化を示す報告もみられます。
 甲状腺癌の診断にはエコー検査と細胞診を一般的に施行し、乳頭癌の診断には特に有効です。濾胞癌は、それらの検査では良性の濾胞腺腫との鑑別が困難なことがあり、摘出してみなければわからないことがあります。
 広島共立病院外科で施行された甲状腺手術症例(一九八七年~二〇一一年)は計三一九例で、そのうち甲状腺癌は二五六例(乳頭癌二四七例、濾胞癌等九例)でした。

甲状腺全手術症例

二〇〇三年~二〇一一年に施行された甲状腺癌一〇八例について分析しました。発見契機は、腫瘤などを自覚した例が三例(二・九%)とわずかで、無自覚が一〇五例(九七・一%)の大部分でした。無自覚の内訳は、検診が六五例(当院乳癌検診時エコーが四〇例、一般検診が二五例)、他症状や他疾患の診断または治療中の一般診察時が三九例、家人の指摘が一例でした。

甲状腺癌手術症例発見契機

手術は腫瘤が単発であれば甲状腺亜全摘術(または片葉切除術)+両側頚部リンパ節郭清術、腫瘤が複数であれば甲状腺全摘術(または亜全摘術)+両側頚部リンパ節郭清術施行しています。乳頭癌はリンパ節転移をきたしやすく、腫瘤の大きさが〇・五㎝以下の小さな癌でも一七例中七例(四一・二%)、1㎝以下で六八例中三四例(五〇%)にすでに転移が認められました。腫瘤が大きくなるほどリンパ節転移の陽性率が高く転移数も多くなっており、甲状腺外被膜に近接する気管や反回神経などへの浸潤をきたしている例も認められました。

腫瘤の大きさとリンパ節転移

小さくてもリンパ節転移陽性率が高いことなどから、リンパ節郭清など極力癌が残らないように手術は時間をかけて最大限に施行しています。
 今後も甲状腺癌の診断および治療に精進していきたいと思っています。

甲状腺がんの入院から術後

4階病棟師長  菅  太 佳 子

 4階病棟は外科・消化器内科の混合病棟です。
甲状腺腫瘍の診断を受けて、手術目的で入院される患者様の看護をさせていただいています。手術は全身麻酔で行われ、手術当日から翌朝までベッド上で安静となります。朝の外科回診で医師が状態を確認したのち、酸素マスク、心電図モニターなど医療器機や、尿留置カテーテルを外します。昼頃には、歩行ができるようになります。首の部分の手術ですので、急に振り向いたりなど、首や頭を急激に動かさないようにしていただきます。また、頭を後ろに引くと首を引っ張るので、後屈させないように説明をしています。食事は昼から普通食を食べていただきます。
甲状腺腫瘍の患者様は女性が多いです。首もとの傷は徐々に薄くなってきますが、女性の方にはスカーフやマフラーをつけていただくように退院時には説明をさせていただいています。

私が甲状腺がんに…

広島共立病院で手術を受けたAさん(女性)

 私が甲状腺がんの手術をしたのは、一年五ヶ月前です。
 健診を受けたとき、甲状腺の精密検査が必要と言われ、甲状腺エコー検査をすぐ受けました。その時の生体検査の結果を受け、甲状腺がんの手術が必要となりました。何故私が癌に…と言う思いもありましたが、医師からの説明は、「ほとんど手術で完治できる。手術中にも検査し、甲状腺を部分的に残すかもしれない。」など、よくわかる説明で、質問にもしっかり答えてくださり、安心して受けることができました。
 手術前日に入院し、全身麻酔で手術を受けました。手術はリンパ節を郭清し、甲状腺を一部分残す事ができました。手術翌日から歩き、食事も出来ました。甲状腺を一部残すことができたので、手術後何も薬も飲んでいません。傷もぜんぜんわかりません。本当に早期発見で治療を受けられてよかったです。